本研究部門では再生可能燃料のグローバルネットワークを早期に実現するため,再生可能燃料に係るシステム技術や社会制度を俯瞰し,社会実装の前倒しを目指した提言をまとめる.
以下のワーキンググループ(以下「WG」)を中心に検討を進め,公開シンポジウム等を通じて検討結果の発信に努める.

WG1 グローバル再生可能水素製造の技術経済分析・LCA
WG2 再生可能燃料が社会に受け入れられるためのシナリオ検討
WG3 再生可能燃料を利用した地域再エネマネジメント提案

WG1:グローバル再生可能水素製造の技術経済分析・LCA

検討内容
  • GWスケールに拡張可能なプラントデザイン
    • 水素製造に特化した再エネ電力(PV,風力)と蓄電池・水電解による水素製造専用プラントを概念設計する.
    • 現在進行中の小規模実証(宮崎:サブkW PV+蓄電池+DCグリッド,QLD:30 kW +蓄電池+DCグリッド)の成果を参考に,MWからGWスケールへのスケールアップを検討する.
      • グリッドはACかDCか?
      • GWスケールのプラントを構成するユニットセル(PV+蓄電池+水電解装置)のサイズは?
      • 製造した水素のプラント内輸送,貯蔵の手法は?
  • 海外の適地検討・ベンチマーク
    • PV,風力,水力など各再エネ源によって異なる海外適地を検討する.
    • 発電源に加えて,水源(水量および水質),輸出基地となる港等への輸送も検討課題.
    • 豪州に関しては,連携先のクイーンズランド工科大と協力して適地を探索する.
  • 水素製造コスト見積もり,水素混燃・専燃による発電の技術経済性検討
    • 発電源・気候条件により異なる発電・蓄電・水電解の最適容量組み合わせを検討
    • 水電解装置(ポリマー型,アルカリ型)の間歇運転への対応可能性調査
    • 水素を燃料源とする発電の動向調査,水素コストに基づく発電コスト検討.
  • 水素キャリアの相互比較・技術経済分析
  • 水素・発電のコスト試算からLCAへの拡張を検討.


WG2:再生可能燃料が社会に受け入れられるためのシナリオ検討

検討内容
  • 国内とグローバルの再エネ市場拡大に向けた分析
    • 国内再エネの供給コストの将来予想
    • 国内とグローバルの再エネ付加価値の動向調査と将来予想
    • 国内とグローバルの再エネ需要、将来ニーズ検討
    • 再エネ費用の社会負担の将来予想
    • 既存燃料のグローバルネットワーク構築のプロセスと課題の分析
  • 海外産再生可能燃料の導入シナリオ検討
    • 豪州と連携した立ち上げ期の仕組みと日本企業、日本政府との連携の検討
    • グローバルの需要家と連携した市場(需給構造)形成の検討
    • 2020~2030年の社会状況の変化を想定したシステム形成シナリオの検討
    • 再生可能燃料のグローバルな市場形成に向けた仕組みの検討
  • 促進するための法制度調査.政策提言に向けた準備
    • グローバル流通プロセスで障害となる法制度の調査・対策案検討
    • 再生可能燃料の流通・取引システムの検討
  • 水素キャリアの優劣,メタネーションの成立可能性(炭素オフセットなど)検討.


WG3:再生可能燃料を利用した地域再エネマネジメント提案

検討内容
  • 再生可能燃料(水素、メタン)の利活用:モビリティや化学産業への利用
  • 再エネ及び再エネ水素を利用した分散型エネルギーマネジメントの検討:地産地消、完全自立、面的利用
  • 広範な再エネ・燃料の利用を検討:例えば商業、物流、農業利用等

ワーキンググループの検討内容


その他研究:オートサーマル式NH3分解触媒の開発

研究内容
  • NEDO事業:大規模アンモニア分解向けオートサーマル式アンモニア分解触媒の技術開発※1
    • 大規模需要を想定した新規オートサーマル式アンモニア分解触媒開発
    • 触媒量産化に向けた成形型触媒の仕様・製法の確立
    • オートサーマル式に適したアンモニア分解プロセスの開発、商用機概念設計
    • 高圧ベンチ試験による新規開発触媒の性能評価
    • オートサーマル式アンモニアクラッキングと発電技術の組み合わせに関する評価

    • ※1 「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」(NEDO)